始末屋 妖幻堂

「何だ、どこ行ってたんだ」

 ざっと中を見ただけで顔を引っ込めた千之助には気づかず、ヤクザ者たちは青い顔で飛び込んできた男に言った。
 元々そう力のある人物でもないのだろう、特に気にすることもなく、皆すぐに視線を戻す。

「う~ん。俺っちとお前で、十人ずつぐらい・・・・・・。おさんが厄介だな」

 戸のすぐ横で、千之助は牙呪丸を見た。
 絞め殺すのは、複数一度には無理だ。
 巻き付かないといけないので、二人が限度である。

 辺り構わず暴れ回れば、相当な人数を相手にすることも可能だが、一応小菊がいるのだ。
 この狭い部屋の中では、巻き添えを食う恐れがある。
 牙呪丸が暴れられない分、千之助が一手に引き受けなければならない。

『旦さん。あちきをお忘れでないかえ』

 狐姫が、つんつんと千之助の袖を引っ張る。

『あんな奴ら、あちきが始末してやるよ』

「・・・・・・んにゃあ、お前さんは小菊を守ってやんな」

 鼻息荒く言う狐姫を宥めるように、千之助は穏やかに言った。
 少し不満そうに見上げてくる狐姫に、千之助は懐手をして続ける。

「お前さんにゃ、あんま血に汚れて欲しくねぇんだな」

『旦さん・・・・・・』

「汚ねぇ仕事は、俺っちに任せな。太夫が荒事に首突っ込むもんじゃねぇぜ」

 しょぼん、となった狐姫を、千之助は抱き上げた。