始末屋 妖幻堂

 部屋の戸は、もう妙な仕掛けはなさそうだ。
 視線を怪しく彷徨わす男を押しやり、千之助は戸に耳を付けて、中を窺った。
 騒がしい感じはない。

「折檻してる感じでもねぇな。けど、見世の男衆全員が集まってるにしちゃ静かだ」

 すでに殺されてしまったのだろうか。
 でも、小菊は金の生る木だ。
 折檻はしても、殺しはしないはずだ。
 それこそ二度と、ここから出られないようにはされるだろうが。

「・・・・・・考えても仕方ねぇ。おい、お前がまず入りな」

 千之助が顔を上げて、男に言った。
 が、男はふるふると震えながら辺りを窺うだけで、動こうとしない。
 千之助の言うことを聞かない男に、狐姫の怒りが爆発した。

『何ちんたらしてんだいっ! 旦さんが入れって言ってんだろっ!』

 飛びかからんばかりに牙を剥き出して怒鳴る狐姫に、男は飛び上がった。
 一瞬で恐慌状態に陥る。
 恐怖と焦りで、あり得ないほど震える手で、戸を開く。

『入りなっっ!!』

「ひいぃぃっ」

 思わず男は悲鳴を上げる。
 倒(こ)けつ転(まろ)びつ中に入る男の後ろから、千之助は中を覗き込んだ。

 中にいる者らが、一斉にこちらを向く。
 ざっと二十人ほどいるだろうか。
 いずれも見るからに凶悪そうな面構えだ。