ということは、この美麗な青年の下半身は・・・・・・。
 そこまで考え、少年は口から泡を吹いて後ろに倒れ込んだ。

「情けねぇなぁ。この程度でおねんねか。こいつぁ博徒にゃなれねぇな」

 軽く気を失った少年の肩を蹴り、千之助はちらりと小太を見た。
 小太は宙吊りのまま、阿呆のように口を開けて牙呪丸を凝視している。

「小倅の代わりに、お主を投げ込み寺の穴に放り込んでやろう」

 牙呪丸が言うと同時に、ばきんと音がし、男が弛緩した。

 千之助は腰に差していた小刀を抜き、小太の縄を切った。
 どすん、と地に、小太が落ちる。

「痛っ。旦那、支えてから切っておくれよ」

「文句言うなぃ。どっちにしろ、俺っちにゃお前一人を支える力はねぇよ」

 しれっと言い、蓑虫状態で転がる小太の、身体に巻き付いてる縄も切る。
 
「よし。ん? やっぱりちょいと怪我してんな」

 監禁されている間、小太はそれなりの折檻を受けたのだろう。
 あちこちに痣ができている。

「平気だい。これぐらい」

 出血しているところはあまりないが、結構いろんなところが腫れ上がっている。
 今日昨日は、もう小太のことなどどうでもよくなっていただろうから、出血していたとしても、すでに乾いているだろうが。

「お前さん、こんなに痛めつけられても、小菊のことを喋らなかったのかい」

 強がってみせたものの、千之助に支えられないと動けない小太に、少し感心して言ってみる。
 小太はちょっと赤くなって、しかし力強く頷く。

「自分で逃がしたのに、自分で居場所教えちゃ、意味ないだろ・・・・・・」

「偉いぜ。男だねぇ」

 腕を肩に回して小太を支えつつ、千之助は小太の頭を手荒く撫で、そのまま牙呪丸が開けた扉に向かった。