「構わねぇ。食う分にゃ女と違って不味かろうが、絞め殺す分にゃ、女よりも男のほうが、絞め甲斐があるだろ」

「ほほ、確かに。女子はすぐに潰れてしまうが、男は硬いからの」

 先程までは、どんな状況でも全く表情の動かなかった美麗な青年が、僅かに口角を上げて言った。

「お主の未来には、何の価値も見出せないようじゃ。どっちにしろ、お主のような輩は、長生きできまいよ。ただのヒトに、ヒトの怨念など背負えぬものよ」

 くくく、と笑いながら、牙呪丸が男の周りを回った・・・・・・ように見えた。
 が、実際は足はその場から動いていない。
 上体だけが、くるりと男の周りを回ったのだ。

 ヒトにしては不自然に、牙呪丸は男に巻き付いた。

「旦那の矢で、お主は指先一つ動かせぬ。ふふ、木偶の坊のように突っ立ったまま、じわじわ絞め殺してくれる」

 男はかくかくと戦慄く顎を必死で動かし、己の身体を見下ろそうとする。
 恐怖で冷静でいられない状態でも、この美青年の行動は、ヒトとしてあり得ないということはわかる。
 ヒトの身体がこのように巻き付くことなど、あり得ないからだ。

 どう頑張っても身体は動かないため、視線だけを必死で下に向けた男は、目を見開いて息を呑んだ。
 隅に転がっている少年も、男の視線を追って『それ』を見た途端、大きく口を開けて固まった。

「っっぃひいいいぃぃぃっっ!!」

 少年の口から、悲鳴が迸る。

 男の下半身に巻き付いているのは、どう見ても蛇。
 しかもその辺の小さな蛇ではない。
 一抱えもありそうな太さの蛇が、男に巻き付いている。
 その蛇の身体を追っていくと、どう考えても美青年の顔に行き着くのだ。