始末屋 妖幻堂

「お前さん、そんなことぐらいでビビってちゃ、ここの裏見世なんかでやっていけねぇぜ」

「・・・・・・兄ちゃん、良くわかってるじゃねぇか。あんたもどっかの用心棒なのか?」

 男は千之助に興味を持ったようだ。
 少年は戦力にならないので、このままだと一人で二人を相手にしないといけない事態になる。
 それよりも、味方に引き込んだほうがいいと踏んだのだろう。

「俺の見たところ、あんたはその辺の奴よりも、肝っ玉が据わってる。どうだい、手を組んだほうが、後々のためにも良くないか?」

「後々・・・・・・?」

 少年の顎を掴んでいた手を離し、千之助は男を睨んだ。
 拘束を解かれても、少年はその場に尻餅をついて震えている。
 腰が抜けたようだ。

「自慢じゃねぇが、ここの用心棒は、そこいらの廓の男衆とは訳が違う。花街内でも有名な、まさに『亡八』だって話は、聞いたことあるだろ? それが俺たちさ」

「・・・・・・ほんとに自慢にならねぇな」

 千之助の呟きを、男は理解しなかったようだ。
 少し訝しげな顔をした。

「そんな俺たちを、敵に回すのは賢くないと思わないか? お前さんが何者かは知らねぇが、伯狸楼のこんなところまで平然と入り込んでくるたぁ、真っ当な人間じゃねぇはずだ。違うかい?」

「ま、確かにな。お前さんに言われたくはねぇが、『真っ当な人間』ではねぇわな」