始末屋 妖幻堂

『こんな奴、旦さんの手を煩わすまでもない。あちきが始末してやるよ』

 狐姫が牙を剥き出して、ずいっと身を乗り出す。
 それを手で制し、千之助は少年に近づいた。

「お前、ちょっとした小悪党にも見えねぇな。どういうつもりでこんなところに出入りしてる?」

 子供でも、ヤクザ者に売られたりして、小さい頃から悪に手を染める者もある。
 だが目の前の少年は、身体こそ大きいが、ただおろおろと震えるばかりで、とても掏摸(すり)や喧嘩ができるようには見えない。

「ああ・・・・・・ううう・・・・・・」

 千之助の視線に射抜かれ、少年は最早歯の根も合わないほど震えている。
 喋るのもままならないほどだ。

「・・・・・・何もしてねぇうちから、こんなにビビられるたぁ、久しぶりなことだなぁ」

 呆れ気味に言いながら、千之助は片手でぐいっと少年の顎を押さえた。

「そんなに怖ぇなら、素直に答えな。おめぇはここと、どういう関係だ。返答如何によっちゃ、見逃してやんぜ」

 ぐっと顔を近づけて言う千之助に、少年はかくかくと頭を動かす。
 この分では、大した脅しをしなくても、何でもぺらぺら喋りそうだ。

「おいっ! 余計なこと言うんじゃねぇぞ!」

 牙呪丸の相手をしていた男が、いきなり少年に向かって怒鳴った。

「妙なタレ込みしてみろ! 投げ込み寺の穴に、放り込んでやるからな!」

 ひ、と少年が息を呑む。
 男のほうは、こういうことに慣れているようだ。
 小太を痛めつけていたのも、この男かもしれない。