始末屋 妖幻堂

『馬鹿か! 何やってんだよ。助けなきゃいけない小太を盾にしてどうすんだいっ』

 千之助の肩の上から、狐姫が牙を剥く。
 幸い切っ先が掠っただけだったので、大事には至らなかったが、小太も驚いた顔で牙呪丸を見る。

「助ける? 外に出す、というのは、そういうことか。そうか、そういえば呶々女も手当ての用意をしておくとか言うておったな。あまり傷を負わすと、呶々女の手を煩わすということか」

 なるほど、と納得し、牙呪丸は再び小太の前に出た。
 いつもの事ながら、相変わらず全ての思考が呶々女絡みだ。

 『外に出せば良い』ということは、それが死体であろうと構わないと思っていたのだ。
 どんな状態でも、外に出しさえすればいいわけではない、と思うに至ったのも、あくまで大怪我で出せば、その手当てをする呶々女が大変だから、と思った故だ。

「お前は何を一人でぶつぶつ言ってやがるんだ! 気色悪いんだよ!」

 木刀の男が、再び向かってくる。
 牙呪丸は、今度はちゃんと小太を庇いつつ、振り回される木刀を避けた。

「よぉ。お前は何か、良い得物、見(め)っかったかい?」

 千之助が、もう一人の男に向かって声をかけた。
 その声に、必至で得物を捜していた男は、びくりと肩を震わす。
 おずおずと振り向いた顔は、まだ幼さの残るそばかす面の、少年だった。

「おや。こらまた意外な。図体がでかいから、てっきり一端のヤクザ者かと思ってたぜ」

 千之助の言うとおり、顔を見なければ、他の男らと何ら変わらない体格だ。

 が、やはり態度は子供だ。
 ヤクザ者のように擦れたようなところもなければ、荒事に慣れた風もない。
 このような場面に、ただおろおろと己の身を守る武器を捜すしかできないようだ。