始末屋 妖幻堂

「あ~あ。だから言ったろ。利き腕だなぁ、残念」

 のんびりした声と共に、赤い線を引きながら、何かが降ってきた。
 唖然と倒れた男を覗き込んでいた男二人の前に、どさ、と落ちたのは、血まみれの右手。
 何かに食い千切られたように、切断面はぐちゃぐちゃになっている。

『ああ、ご免よ旦さん。旦さんの着物まで汚しちまった』

 狐姫が、千之助の着物に飛び散った血を見て言う。

「構わねぇよ。それよりお前さんこそ、血に汚れちまってるぜ。別嬪が台無しだ」

 相変わらず薄く笑いながら、千之助はそう言って、己の袖で狐姫の口周りを拭った。

「旦那。この小僧を、外に連れ出せばいいのか?」

 牙呪丸が、吊り下げられている小太を見ながら言う。
 その言葉に、小太がぶんぶんと頷いた。
 牙呪丸は、小太をぶら下げている縄に手をかけた。

「こっこの野郎! お前ら、この小僧の仲間か!」

 初めに小太との関係は、千之助自ら言ったはずだが。
 男の一人が立てかけてあった木刀を取り、牙呪丸に向かって突き出した。

 今一人も、慌てて得物を捜す。
 その様子から、どうやらこの者たちは、ヤクザ者とはいえ、使いっ走り程度の者なのだろう。

「食らえぃっ」

 牙呪丸に突きつけた木刀を、男が思いきり横薙ぎに払った。
 迫る木刀を避けるため、何と牙呪丸は掴んでいた縄を軸に、小太の後ろにひらりと回る。
 ばしんと木刀が、小太を打った。