始末屋 妖幻堂

「おいおい。力任せに引っ張ると、腕がもげるぜ」

 千之助が、ゆっくりと振り返りながら言う。
 薄笑いを浮かべたその表情に、男はますます恐慌状態に陥った。

「ひいぃっ。は、放してくれぇ!」

 千之助の忠告も虚しく、ぐいぐいと腕を引っ張る。
 男の手首から、血が噴き出した。

「な、何だ? 何が起こってるんだ?」

 他の二人も、この奇妙な出来事に固まっていたが、ようやく頭が動き出したようだ。
 状況を把握しようと、一人が千之助の肩に手を置いたまま泣き叫んでいる男に近づいた。

「何もないじゃねぇか。とにかく、こっちに来い」

 無事なほうの腕を、ぐい、と引っ張る。
 が、男の手は相変わらず血を噴いたまま剥がれない。

「おい、ふざけんな。お前が邪魔で、こいつらを始末できねぇじゃねぇか」

 自分と千之助の間に突っ立ったまま動かない男に苛ついたのか、ヤクザ者は二人がかりで思いきり男の腕を引っ張った。

「ぎゃあああぁぁ~~~~っ!!」

 叫び声と共に、一際派手に血が飛んだ。

「ほれ、外れたじゃねぇか・・・・・・」

 やっと自分たちのところに戻ってきた男を見下ろした他の二人が、息を呑む。
 千之助の肩を掴んでいた男は、最早叫ぶ元気もないように、白目を剥いて倒れ込んでいる。

 その、千之助のほうに伸ばされた腕は、手首から先がなかった。