「へっ。身体は中からじわじわ腐ってるのさ。阿片は脳をぶっ壊すがな、脳を壊しちまうと、てめぇの状態がわからんだろ。それじゃ面白くねぇんだよなぁ」

 顎をさすりながら、千之助が笑う。

「てめぇのやったことを、とくと思い知るがいいぜ」

 ぱちんと、千之助の指が鳴る。
 その途端、男の腹が、不自然に盛り上がった。

「・・・・・・っがああぁぁぁっ!!」

 男の口から、大量の血が迸る。

「ちょっとずつ、腑(はらわた)を潰してやる。言ったろ? そう簡単に殺しゃしねぇ」

 顔の下半分を血で染めた男が、恐怖に引き攣った。
 再び千之助の手が上がる。
 再び指が鳴ったら、次はどこが潰れるのか。
 男は恐怖に震えながら、ずりずりと後ずさる。

 が。

「・・・・・・っ・・・・・・」

 千之助は、指を鳴らすことなく手を下げた。
 己の腹に、軽く手を当てる。

「ち。いくら何でも、度を超しちまったか。・・・・・・お優しいことで」

 忌々しそうに言い、素早く指を二回鳴らす。
 骸骨男は、一瞬で元通りになった。

「今回ばかりは勘弁してやるがな、次は許さねぇぜ。本気でさっきの状態になりたくなきゃ、今後は大人しくしておくこったな」

 呆けたようにへたり込んで、脂汗を流す男を睨み付け、千之助は踵を返した。