「う・・・・・・」

 佐吉の眉間に皺が寄り、呻き声が漏れた。

「・・・・・・あ、あんたが・・・・・・やっつけたのか・・・・・・?」

 うっすらと目を開いて、佐吉が呟く。

「余計なことは気にすんな。あんま喋ると、身体の中が潰れんぜ」

 素っ気なく言い、佐吉を横たえると、千之助は立ち上がった。
 再びのたうち回る男の元へと近づく。

 顔や手足などは、骨に腐肉がくっついているような状態だ。
 ちょっと肉付きの良い骸骨状態だが、不思議と目玉は溶け出さずに残っている。
 だからこそ、より一層不気味なのだが。

 さらに目玉があることによって、男には己の身体が蝕まれていく様が、しっかりと見えているのだ。

「よぉ。気分はどうだい?」

 にやにやと、千之助は男を見下ろす。

「い、痛ぇ! 痛ぇよぅ!! 助けてくれぇ・・・・・・」

 胸や腹を掻きむしりながら、男は地を転げ回っている。
 はだけた着物から覗く身体は、茶褐色に変色しているものの、顔や手のように、肉が崩れて骨が露出しているような状態ではない。