「なかなか元気な奴だねぇ。けど、口が利けんのもここまでだ。ほぉら、頬が溶け出した。そのうち顎が落ちるだろうさ」

「ああああっ・・・・・・はえええぇぇぇぇっっ!!!」

 蝋が溶けるように、男の顔が崩れていく。
 肉が溶け、骨が露わになった顔に、同じく骨だけになった手を当てて、男が叫んだ。
 頬骨に当たった指の骨が、砕けて地に落ちる。

「てめぇはしばらく、そのまま苦しめ」

 どろどろと溶ける男に背を向け、千之助は少し離れたところに転がる佐吉に歩み寄った。
 そろっと身体を転がし、仰向ける。

「おい。生きてるか?」

 軽く頬を叩いて呼んでみるが、反応はない。
 千之助は佐吉の首筋に指を当てて、脈を測った。
 ついで、胸に耳を当てて、鼓動を確かめる。

「・・・・・・弱ぇが、一応生きてるようだな」

 立ち上がり、千之助は傍に転がっていた頭巾の小男の着物を剥ぎ取った。
 その辺で薬草を見つけ、引き抜いてよく揉む。

 佐吉の着物を脱がせた上で、再びそろっと転がし、背中の傷に、揉んだ草を押しつけた。
 引き裂いた小男の着物をあてがい、上体を抱き起こして縛る。