始末屋 妖幻堂

 至近距離で千之助と向かい合ったまま、どれほどの時間が流れたのか。

「・・・・・・安心しなよ。そう簡単に、殺したりしねぇ」

 目の前の千之助が、にやりと笑った。

 瞬間、男の全身の血の気が引いた。
 目の前の小男が、まるで夜叉のように見える。

 千之助に気を取られていた男の胸に、いきなり激痛が走った。

 千之助の手が、ゆっくりと握った矢に力を込めている。
 男はただ、目を見開いた。

 何が起こっているのか。
 いや、小さな矢が、己の胸に沈んで行っているのはわかる。
 それは一体、どういうことなのか。

 目の前の小男は、何故表情も変えずに、握った矢を‘ゆっくりと’胸に刺し込んでいるのか。
 ・・・・・・ヒトの身体にゆっくりと矢を刺すことなど、普通の人間にできることだろうか。

 親指の長さほども刺さっただろうか。
 千之助が、手を離した。

「心の臓にゃ、届いてねぇ。けど、あとちょいと沈みゃ、ぶっ刺さるぜ」

 茫然と、己の胸元を見つめる男に薄笑いを浮かべ、千之助は一歩、後ろにさがった。