始末屋 妖幻堂

「これは佐吉の親父の分」

 呟きと共に、千之助の手が払われる。
 小さな矢の一本が、男の胸元目掛けて飛んだ。

「ちぃっ」

 男が持っていた匕首を振り上げ、矢を叩き落とす。

「ほぉ。背中に矢生やしてても、一応はそれなりの博徒か」

「なめるな。大体あんた、狙いが恐ろしいぜ。胸元なんざ狙われたら、嫌でも必死にならぁな」

 憎々しげに言う男に、千之助は僅かに眼を細めた。
 再び、今度は続けざまに手を払う。

 矢が二本、僅かな時間差で男を襲う。
 これも、男は匕首と素手で落とす。

 初めに叩き落としたモノを見、素手でも可能と見たのだろう。
 男の考えたとおり、矢は二本とも地に落ちた。

 だが、両手を使った隙に、千之助は男の懐に入り込んでいた。

 千之助は、手に残った矢の、最後の一本を、とん、と男の胸に当てた。

 矢は、男の胸に軽く当てられているだけ。
 千之助も、特に男の動きを封じる何かをしているわけでもない。

 が、小さな矢が僅かに触れているだけで、男は動きをなくした。