始末屋 妖幻堂

 口を大きく開けて固まる大男の下から起き上がりつつ、千之助は小刀を振り上げるように、大男の腹から肩にかけて斬り裂いた。
 生暖かい血が、千之助にも降りかかる。

 仰け反った大男の下から滑り出し、最後に大男を蹴り倒すと、その勢いのまま、千之助は佐吉に駆け寄った。
 佐吉は背から匕首を生やしたまま、頭の男の足元に倒れている。
 だが背中を刺されながらも、男の足に組み付いており、頭の男はその場を動けないでいる。

「くそっ・・・・・・。離しやがれ!」

 頭の男は苛立たしげに、佐吉の背に刺さった匕首を引き抜いた。
 血が噴き出す。

 抜いた匕首を再び振り下ろそうとする男に、千之助は頭から突っ込んだ。
 佐吉の手から放れ、男は千之助と共に地面に転がった。

「ちっ」

 双方、素早く体勢を立て直す。

「なかなかやるな。まさか、あいつを倒すとはね」

 匕首を構え、男が顎で、少し向こうでのたうち回る大男を指す。
 千之助は小刀を振って血を飛ばし、特に構えるでもなく、だらりと無防備に両腕を下ろした。

「小せぇからって、なめてんじゃねぇ。俺っちはむしろ、やってきた相応のことを思い知らせるから、即殺しにかかるあいつよりも、性質(たち)が悪ぃぜ」