始末屋 妖幻堂

「わかった」

 大男が千之助に向かって屈み込み、手を伸ばした。
 千之助は足首を掴まれる前に、ぱっと飛び退く。
 同時に小刀を抜刀した。

「素手で向かってくる奴相手に抜くのぁ気が引けるが、さすがにお前さんと俺っちじゃ、力がだんちで違わぁ。ちっとぐれぇ、モノ使わしてもらうぜ」

 抜いた小刀を構える千之助を前にしても、大男は特に動揺しない。
 持っている千之助も貧相な小男だし、小刀自体も男たちが持っている匕首よりも随分小さい。
 小柄な千之助が、小さな小刀を構えたところで、筋肉隆々の大男からすれば、脅威でも何でもない。

「おお、あんまり素直に足差し出されても、つまらねぇしな。せいぜい抵抗してみろや」

 相変わらずにやにやと笑いながら、大男が千之助に片手を伸ばす。

「先に言っておくが」

 千之助が、一旦刀を降ろしながら言った。

「俺っちは、ただのヒトであろうと、阿片なんてもの使う輩にゃ、容赦しねぇ」

「へっ。ほざいてろ」

 馬鹿にしたように、大男は千之助を掴もうと手を伸ばす。
 その手が千之助に触れる直前、小刀を握った彼の手が、ひゅん、と振り上げられた。
 一拍置いて、大男の腕から、激しく血が噴き出す。

 そのときになっても、大男は何が起こったのかわからず、目を大きく開いて、血を噴き出す己の腕を見つめた。