始末屋 妖幻堂

「・・・・・・えらいことを、してくれたもんだなぁ。これじゃ、伯狸楼を潰したところで、遊女らが真っ当な道に戻れるとも限らねぇ」

 きり、と千之助は奥歯を噛みしめた。

「伯狸楼を潰すだと? こりゃまた、大きく出たな」

 大男がせせら笑う。

「その前に、自分の身が潰れる心配をするべきだなっ」

 笑いを浮かべたまま、大男は踏み出すと同時に両手を突き出した。
 大柄な身体からは想像できない俊敏さだ。

 間一髪、千之助は横に飛び退いた。
 後ろに飛び退ったのでは、間に合わないと思ったからだ。

 が、大男はそのまま突き出した腕を横に払った。
 ぶぅん、と唸りを上げ、拳が千之助を襲う。
 同じ方向に飛んでいたため、衝撃は緩和されたが、それでも大男の拳を食らい、千之助は吹っ飛んだ。

「・・・・・・っつぅ・・・・・・」

 したたかに地を滑った後で、ゆっくりと千之助は上体を起こした。
 ぺっと血の混じった唾を吐き出す。

「おおっと。兄ちゃんは軽いからなぁ。気をつけねぇと、地の果てまで吹っ飛ばしちまいそうだなぁ」

 大男が、大袈裟に肩を竦めてみせる。
 その後ろから、頭の男が佐吉の襟首を掴んで言った。

「逃げられないよう、足でも折っておけ。続きはもうちょっと、奥でやろう。ここはうっかりすると、村人が来るかもしれん」