始末屋 妖幻堂

「そんなモン使ってたんかい。そうか、阿片は脳みそをぶっ壊すモンだものな。記憶がおかしくなるだけじゃねぇ。正常な判断もできなくなるし、洗脳にゃもってこいだな」

「そういうこった。常に服用させておけば、中毒になって、特にこっちが注意しなくても、己から呑むようになるしな」

 千之助は眉間に皺を刻んだ。
 伯狸楼に売られた遊女は、おそらく阿片漬けにされているのだ。

 初めに大量に吸わせ、記憶を破壊する。
 廃人にしてしまったら意味がないので、量を調整しつつ吸わせ、同時にいろいろな情報を刷り込んで、脳みそを混乱させる。

 その上で、伯狸楼に放り込んだのだ。
 あとは、おさんが香炉などに阿片を入れれば、そのうち中毒になる。

 廓から逃げ出したりしたら命が危ういとはいえ、何故伯狸楼のような店から逃げ出す遊女がいないのか、不思議だった。
 伯狸楼の非道さは、裏店だけではない。
 無頼の破落戸を抱えていることからもわかるように、他の廓よりも、遊女の扱いが酷いのだ。

 もちろんそんなこと、外の人間にはわからない。
 千之助のように、永く色町を見てきた者にしかわからないことだ。

 だが、中の遊女は気づくだろう。
 呶々女の言うように、中で働く者にも、裏のことはあまり漏らさないよう気をつけていても、全く漏れないわけではないのだ。

 裏の客によっては、遊女が死に至ることもあろう。
 散々嬲られての死なので、見てくれも無惨なものだ。
 そのような死体が何人も出れば、怖くなって逃げ出す遊女がいてもおかしくない。

 現に、他の普通の廓でも、脱走騒ぎが結構あるのだ。
 一番ヤバそうな伯狸楼にそういったことがないのは、あそこから出たら、阿片が手に入らないからだったのだ。
 中毒になってしまったら、阿片なしでは生きられない。