「お前さんら、俺っちをどうするつもりだ。とっ捕まえて、伯狸楼に連れて行くんか?」

 それならそれでもいいかな、と思ったのだが、頭の男は、ふ、と冷たく笑った。

「それも考えたが、生憎ここから都までは、とても運べん。聞くことを聞いたら、おさらばだな」

 つまり、どこぞの人気のないところに連れて行って、結局は殺すということか。

「俺っちが、大人しく全部喋るとも限らんだろ」

「その点については大丈夫だ。ま、ある程度は言いたくなるようにしてやるがな。最終的にゃ、理性も何もなく、洗いざらい何でも吐くように仕向けるさ。阿片を使ってな」

「・・・・・・!」

 ただのヒトに、記憶を操作するような術が使えるのか、ずっと引っかかっていた千之助だが、男の言葉に全ての謎が解けた。

 阿片は麻薬だ。
 なるほど、香だけでヒトを操るなど、それこそ千之助のようなヒトならざるモノの技だ。
 里のように、千之助の知らないところに人外がいても不思議ではないのだが、小男がそういったモノだとも思えない。

 香だけでヒトをああまで操るなど、かなりの術だ。
 あのように愚かっぽい者が使える術ではないのだ。