「俺たちもお前も、こいつが鍵なのは同じ・・・・・・。違うかい?」

「そうかな? お前さんたちからしたら、佐吉も俺も、同じぐらい大事な情報源じゃないのかい?」

 千之助は、わざと注意をこちらに向ける。
 が、一応男たちが欲している情報の全てを握っているのは黙っておく。

 男たちは、小菊を捜している。
 小菊は千之助のところにいるのだ。

 小太の店で小菊を逃がしたのが佐吉だったとしても、彼はその後、小菊がどこへ逃げたのかまでは知るまい。
 つまり、佐吉をいくら問い詰めたところで、小菊の居場所はわからないのだ。

 しかし、それを今ばらすのは好ましくない。
 ばらせば男たちにとって、佐吉は何の価値もなくなる。
 むしろ己らの所業を知っている邪魔者でしかなくなるのだ。
 即殺される可能性が高い。

 千之助としても、はっきり言うと、佐吉はもうどうでもいい。
 聞くべきことは、今までの話ですでにわかった。

 千之助の仕事は、小菊に関することであるので、佐吉の父親や兄のことは、本来どうでもいいのだ。
 ただ、最終的には伯狸楼を潰すつもりなので、二人の死に伯狸楼が関わっているなら、詳しく調べたほうがいいと思っただけのこと。

 だが佐吉は、家に寄りつかなかったのなら、あまり詳しい状況はわからないのではないか。
 大した情報も持っていない佐吉が男らに殺されたところで、千之助は困らないのだが・・・・・・。