「さて、じゃあ最後の質問といこうか。お前さんらが佐吉の家に乗り込んだとき、兄貴はどんな状態だったぃ?」

 質問が意外な方向に向いて、男たちはきょとんとした。

「・・・・・・兄貴?」

「佐吉の兄貴だ。家の中にゃ、親父だけだったわけじゃあるめぇ。いや、初めは佐吉もいたんだったな。親父と、佐吉と、あと一人いたはずだぜ」

 頭の男が少し考え、ああ、と呟いた。

「そういや、奥に男が転がってたっけな」

「生きてたんか?」

「生きては・・・・・・いたかな。でも、動くのもままならねぇ感じだったぜ」

 ふむ、と頷く千之助に、男は面白そうに眼を細めた。
 興味をそそられたように、一歩千之助に近づく。

「・・・・・・つくづく、気になる野郎だ。知り合いじゃないわりに、随分と佐吉のことに詳しいじゃねぇか」

 千之助は、軽く肩を竦めてみせる。

「そりゃ、小菊のことを洗ってりゃ、自然佐吉のことにも明るくなる。ま、俺っちは小菊のことさえわかればいいんだ。兄貴のことは、ついでさね。ちょいと、調伏した奴に関わってたようだから、気になっただけさ」

「なるほどな。目的は、俺たちと同じ、というわけか」

 にたりと笑い、男は腰に差した匕首を抜いた。
 それを、足元の佐吉に翳してみせる。