「さ~、目覚めたときの、こいつの記憶はどうなってるかね~」

 千之助が軽く言う。

「・・・・・・なかなかやるな」

 頭の男は、さすがに落ち着いている。

 大男はというと、どうしたものかと視線を彷徨わせている。
 侮っていた千之助が、一撃で小男を倒したので、驚いたのだろう。
 もっとも倒したのは千之助よりも小さいような小男なので、それだけで千之助が強いとは思わないだろうが。

「ふ~む、お前さんたちの手は、何となくわかった。香を使ってそれらしい記憶を刷り込むってことか。元々記憶は曖昧になった状態だからな、そこにちょいと真実味のあることを刷り込めば、まぁ別人格を作り出すことも可能、か。でも洗脳ってほど、キツくはないようだな。緩い記憶操作は、廓では、おさんが目を光らせてたんだろ」

 香を使った術の類は、お手の物だ。
 長の記憶が戻ったように、多分里によって記憶が曖昧になっていた者らは、治っているだろう。
 今は香による、軽い操作だけが残った状態になっているはずだ。

---そんなら、破るのなんざ、わけねぇぜ---

 にやりと、千之助は口角を上げた。