始末屋 妖幻堂

「そういうわけにゃいかないんだな。伯狸楼は、一旦入ったら出られない。裏要員ならなおのこと。あいつは目玉の商品だし、端から裏行きだったからよ、昔から裏に通じちまってるんだな」

「そうか。傷物だったな。でもそりゃ、おさんのせいだろ? そうそう、大事な商品を駄目にするような遣り手、よく雇ってるな」

 大男は一旦足を止め、ちらりと頭の男を見た。

「良く知ってるな。やはりお前は、このままにしておくにゃまずそうだ」

 視線を受け、頭の男が口を挟む。
 そして、初めから特に何をするわけでもなく、ひっそりと佇んでいる小男に目配せした。

「殺っちまっては、まずいかもしれんな・・・・・・。生け捕りにして、調べた後で記憶を消すか」

 小男が、一歩前に出た
 どうやらこの男が、記憶をいじれる術者のようだ。

「頭、捕まえてくれねぇと」

 小男が言う。
 頭の男は大男に向かって顎をしゃくった。

 大男が千之助に掴みかかる。
 それをひょいと避け、千之助は後ろに飛び退った。

「ふ~む、なるほどね。佐吉から受け取った娘らの記憶は、お前さんが消してたんかい。もっともその前から、曖昧になってたからこそ、そんなちゃちい術でも効いたんだろうがな」

「なっ何だとっ」

 小男が声を荒げる。
 己の術に自信があるのだろう。