始末屋 妖幻堂

「やっぱりここは、取引の場所かい。この大木は、外からの者にゃ、格好の目印だものな。村からも、ちょいと外れてるし」

 大木を見上げる千之助を、男はじっと見た。

「・・・・・・不思議な奴だ。一体お前さんは、何者なんだい? 佐吉の仲間とも思えんな。まして、佐吉に仕事の口を頼むような奴にも見えん。何のために、こいつと行動を共にしている?」

 ごつ、と男は、匕首の柄を佐吉の頭に当てた。

「やはりお前、見覚えがあるな」

 千之助は口角を上げ、持っていた小刀を懐にしまった。
 そのまま、懐手をして息をつく。

「そうかい。ま、あんたも伯狸楼にいるなら、うっかり顔合わせてるかもな。あすこにゃ、古い知り合いがいる。とんだ遣り手を使ってるもんだな。おさんは、どうやって伯狸楼に入り込んだんだ?」

 男が驚いたように、目を見開いた。

「何故遣り手のことを知っている。お前も廓者なのか?」

 それには答えず、千之助はゆっくりと、男たちから距離を取る。
 自然、佐吉からも離れることになり、それに気づいた佐吉が、縋るような目を向けた。

「・・・・・・情けねぇ顔すんじゃねぇ。お前はまだ、俺っちにゃ必要な人間だ。ここでこいつらに引き渡すにゃ、まだちょいと勿体ねぇや」

 三人の男たちの足元に蹲る佐吉に言う千之助に、頭の男も少し動いた。
 ようやく手の痛みが引いた大男の前から、少し身体を避ける。
 再び大男をけしかけるつもりのようだ。