始末屋 妖幻堂

「お前さんは、ここで佐吉から村人を受け取ってた。佐吉にゃ口入れ屋に連れて行ってやる、と言っていたそうだな。大方娘らは伯狸楼の裏に入れて、男は人足小屋にでも放り込んだんだろ」

 千之助は、口を引き結んでいる男から、樫の木に視線を移した。

「小菊は元々、あんたらに引き渡されるような娘じゃなかったはずだぜ? ここで佐吉と待ち合わせをしていた、単なる村娘だ。それはあんたと佐吉が謀ったことか? 長のところからの人員がいなくなったから、何ともなってない小菊を騙したのか?」

「違う!」

 泥まみれで転がっていた佐吉が、いきなり声を張り上げた。

「お、俺は、清を売るつもりなんかなかった! 何となくヤバい空気を感じたから、逃げるつもりだったんだ。ただ、村にいたらこいつらに捕まるかもしれねぇ。俺の小屋だって、そのうち見つかるだろう。だから、そこに出入りしてた清も連れて、どっかに逃げるつもりだった」

「ほぉ。その日が、お清がこいつらに連れ去られた日ってことか。ここで待ち合わせてたんだろ? お前が着く前に、お清---小菊はこいつらにとっ捕まったってことか」

 相変わらず顎を撫でながら、千之助は呟いた。
 一応千之助は佐吉寄りの立場のはずだが、足元に転がる佐吉に手を貸す素振りはない。

「馬鹿な奴だな。ここは元々、俺との取引の場所だぜ。そんなところにそれなりの女子を置いときゃ、次の商品だって思うのは当たり前だろ?」

 頭の男が、大袈裟に肩を竦める。