始末屋 妖幻堂

「お前さんのお陰で、やっと確証が得られた。なるほど、やっぱしあの小菊は、清って娘なんだな」

 とんとんと小刀で肩を叩きながら、千之助が言う。
 少し離れたところに転がっていた佐吉が、腫れた目を千之助に向けた。
 先程の蹴りで、顔の半分が腫れ上がっている。

「お前さんら、佐吉に小菊の居場所を吐かせるために来たってことかい」

 小菊が逃げ出すきっかけを作った、見張りの男衆の着物を汚したという八百屋の客が、佐吉だったのだ。
 小菊が気づかなかったということは、佐吉も顔を隠していたのだろう。
 佐吉だって、伯狸楼の者に顔を晒すわけにはいかない。

「けど、別にそれは、こいつじゃなくても良くなったようだな?」

 不意に、大男の後ろから声がした。
 と同時に、再び佐吉の呻き声。
 見ると、頭の男が佐吉の頭を足で踏みにじっていた。

「お前も、なかなか事情を知ってるようじゃないか。こいつよりも、確実そうだ」

 千之助は肩を竦めた。

「さぁ、どうだかな。俺っちからしたら、お前さんらがどういった奴らで、伯狸楼とどういった関係があるのか。小菊をそこまで執拗に追うのは何故なのか。そこのところをお聞きしてぇもんだ」

 男の目が細められる。
 手を打たれた怒りに、隙あらば飛びかかろうとしていた大男を制するように前に出ると、頭の男は千之助のすぐ前に立った。

「ふ~ん・・・・・・。お前もただの鄙男じゃないな。やけに都の花街に詳しいみたいだな?」

 じろじろと千之助の頭の先から爪先までを観察し、男はおや? という表情になった。

「どっかで会ったことがあるような・・・・・・」