始末屋 妖幻堂

「お前さんらが出張ってきたのぁ、今回が初めてだろ? 何となくあんたらの正体に気づいた佐吉を、始末しに来たんじゃねぇのか?」

 今までは、おそらく頭の男一人が佐吉に会っていたのだ。
 麓の口入れ屋に連れて行くのに、そんなに人数はいらない。
 下手にぞろぞろ来れば怪しいだけだし、まして今千之助の足首を掴んでいる大男など連れてきた日には、さすがの佐吉も取引を断るだろう。

「良い読みだ。ただの鄙男にも見えんな。お前さんは、佐吉の知り合いか? こいつと一緒に、村人の世話でもしていたのか?」

 頭の男は、そう言って少し千之助に近づくと同時に、傍にいた佐吉の腹に蹴りを打ち込んだ。

「ぐぅっ!」

 佐吉が前のめりに倒れる。
 さらにその横っ面を、踵で蹴りつけた。

「・・・・・・俺っちは別に、そいつの知り合いじゃねぇ。けど、知りたいことの鍵ではあるんだ。あんまり手荒に扱って欲しくはねぇなぁ」

 並の人間なら、そろそろ頭に血が上って、ぼぉっとするころだ。
 が、そんな気配は露ほども見せず、まるで重力など感じていないように自然に、千之助は話し続ける。
 千之助を持ち上げている大男のほうが、そろそろ腕が辛くなってきたようだ。

「おや、腕が震えてきたな。お前さん、見かけによらず非力だねぇ。そろそろ俺っちをぶら下げ続けるのも限界か」

 逆さまにぶら下げられて、手も足も出ない状況にも関わらず、にやりと笑って言う千之助に、大男は、かっとなった。