始末屋 妖幻堂

 その様子をじっと見つめ、千之助は、さっと手を払った。
 佐吉を取り巻いていた狐火が、ふっと消える。
 闇が落ちた。

「後悔しているのか。・・・・・・お前さん、家に何しに行ったんだ? 勘当されてたんだろ? 金でも都合してもらいに行って、そこに付き合いのあったってぇ博徒に踏み込まれたんじゃねぇのか」

 地に両手をつき、佐吉は力なく頭を振った。

「そうじゃねぇ・・・・・・。俺は、先にも言ったとおり、家にも寄りつかねぇで遊び呆けてるような奴だからよ、たまに村に帰ってきても、家にゃ入れねぇ。だから、ここにねぐらを作ってたのさ。元々うちの家だって、俺たち家族で建てたんだ。こんな小屋、簡単に建てられる。清にのぼせて、ちょっとは真面目になろうと思ったとき、ちょうど清の家から病人が出たって話を聞いた。家のない奴に困ってるっていうから、そんならここを提供してやろうと思ったのさ」

「ほぅ。それで?」

「初めは長も、半信半疑だったさ。でも俺が麓まで出入りしてたのは知ってるし、それなりに良くなったら、麓で仕事も世話してやれるって、了解を取り付けたんだ」

「ほ。いい加減な遊び人のお前さんの言うことを簡単に信じるたぁ、長も愚かな男だねぇ」

 見るからに人の良さそうな村長の顔を思い浮かべつつ、千之助は相変わらず馬鹿にしたように言った。