始末屋 妖幻堂

「そう・・・・・・かもな。ま、言ってみりゃ純な娘を口説くなんてこと、俺にとっちゃ朝飯前だし」

 へへへ、と笑う佐吉に、狐姫がきろりと目を向けた。
 忌々しそうに、尻尾を振る。

「でもよ、そんないい加減な気持ちじゃなくて、もっと・・・・・・。長にも認められないと、清を貰い受けることを許してもらえるわけないだろ」

「馬鹿かお前は。そんな散々遊びまくって親に勘当されたような悪たれに、わざわざお大尽用に育て上げた娘を添わせるもんかい。そんなこと、許されると思ってたんか」

 馬鹿息子らしく、考えが甘い、と呆れる千之助に、佐吉は、ぐ、と言葉を詰まらせる。
 項垂れ、力なく頭を振った。

「わかってるよ・・・・・・。どうせ俺なんか、村の奴らの厄介者でしかないからな」

 ひく、と千之助の頬が引き攣った。
 こういう後ろ向きな考えは、千之助の癇に障る。
 このような者の、『俺なんか』という言葉は、大嫌いなのだ。

「・・・・・・鬱陶しい野郎だなぁ・・・・・・」

 ぼそ、と呟いた千之助の足元で、狐姫がさりげなく距離を取る。
 辺りの草木が、ざわざわ鳴った。
 千之助を取り巻く空気が変わる。
 異様な空気に佐吉が顔を上げた瞬間、ぼわ、と辺りが明るくなった。

「散々好き勝手してきておいて、被害者面か。確かに厄介な野郎だ」

静かに言う千之助の顔が、青い炎に照らされている。
佐吉の周りを、狐火が取り巻いているのだ。