始末屋 妖幻堂

「・・・・・・俺っちの家に転がり込んできたのぁ、十五の娘だ。都の、伯狸楼って曰く付きの廓の、小菊って遊女だ。何分てめぇのことを覚えてねぇもんでね、ほんとの名前がわからねぇ。けどま、俺は普通じゃねぇから、ちょいとした方法で、娘の過去を探った。そこで出てきたのが、あんたの名前さ。どうやら小菊とあんたは、恋仲だったようだが? 逢い引きの場所に行った途端、妙な輩に連れ去られたらしい」

 先に情報を提供した千之助に、佐吉は、ああ、と両手で顔を覆った。
 しばらく項垂れていたが、顔を上げると真っ直ぐに千之助を見る。

「あんたのことは、信用していいのかい」

 佐吉の言葉に、千之助の片眉が上がる。

「さぁね。そもそも信用ってどういうこった。俺っちはただの小間物屋。遊女の足抜けなんぞに手を貸す気はなかったが、小菊はちょいと不憫だったんでね。けどいつまでも手元に置いておくわけにもいかねぇ。厄介事にゃ変わりねぇんでな」

 言いながら、千之助は腰の巾着から煙管を取り出し、口に咥える。
 煙草を詰めた風も、火を付けた風もないのに、ふっと紫煙を吐き出す。
 その様子を不思議そうに見ていた佐吉は、小さく頷き、姿勢を正した。

「あんたの言う小菊ってのが、清かどうかはわからねぇ。でも、多分そうだと思う。そうだとしたら、もう俺はあんたに頼るしかねぇ。頼む、力を貸してくれ。この通りだ」

 ぺこりと頭を下げる。
 千之助はくるりと指先で煙管を回し、部屋の中を見渡した。