「おい。もしかしてお前、お前のところに清がいるのか?」
佐吉が言った途端、千之助の足元の狐姫が、牙を剥いて唸り声を上げた。
佐吉が驚いて身を引く。
お仲間以外の女子から、千之助が『千さん』と呼ばれるのを厭う狐姫だ。
見も知らない(狐姫からすると)小僧から、千之助が『お前』と呼ばれることなど、我慢ならない。
今にも飛びかからんばかりに毛を逆立てている狐姫を軽く撫でながら、千之助は相変わらずうっすらと笑いを浮かべている。
「・・・・・・口の利き方に気ぃつけろよ。俺は別に、手妻使いじゃねぇが、少なくとも普通じゃねぇ。お前を黙らせるのなんざ、わけねぇぜ」
静かに言う千之助は、特に表情を変えたわけでもない。
薄笑いを浮かべたまま、ちょんと上がり框に座っているだけだ。
体格だって、佐吉のほうが良い。
だが佐吉は、背中を冷たい汗が流れるのを感じた。
千之助の気に圧された佐吉に、満足げにふん、と鼻を鳴らすと、狐姫は再び千之助の足元に蹲る。
「俺は都の小間物屋・妖幻堂の千之助だ。小間物屋の暖簾は掲げてるがな、ま、裏じゃ持ち込まれる厄介事の始末をつける始末屋さ。今は花街から逃げてきたってぇ遊女を一人、預かっている」
はっとしたように、佐吉が顔を上げる。
「そ、そりゃ清か? 都の花街の、そうでかい廓じゃねぇけど・・・・・・そこの遊女じゃないか?」
「さぁねぇ。さっきも言ったが、その遊女はてめぇのことを忘れっちまってるんでね。心当たりがあんのかい? 何でだ? やっぱりお前さん、女衒の真似事でもしてたんかい」
顎をさすりながら言う千之助を、佐吉は束の間じっと見つめ、何から話したもんか、というように、視線を彷徨わせた。
佐吉が言った途端、千之助の足元の狐姫が、牙を剥いて唸り声を上げた。
佐吉が驚いて身を引く。
お仲間以外の女子から、千之助が『千さん』と呼ばれるのを厭う狐姫だ。
見も知らない(狐姫からすると)小僧から、千之助が『お前』と呼ばれることなど、我慢ならない。
今にも飛びかからんばかりに毛を逆立てている狐姫を軽く撫でながら、千之助は相変わらずうっすらと笑いを浮かべている。
「・・・・・・口の利き方に気ぃつけろよ。俺は別に、手妻使いじゃねぇが、少なくとも普通じゃねぇ。お前を黙らせるのなんざ、わけねぇぜ」
静かに言う千之助は、特に表情を変えたわけでもない。
薄笑いを浮かべたまま、ちょんと上がり框に座っているだけだ。
体格だって、佐吉のほうが良い。
だが佐吉は、背中を冷たい汗が流れるのを感じた。
千之助の気に圧された佐吉に、満足げにふん、と鼻を鳴らすと、狐姫は再び千之助の足元に蹲る。
「俺は都の小間物屋・妖幻堂の千之助だ。小間物屋の暖簾は掲げてるがな、ま、裏じゃ持ち込まれる厄介事の始末をつける始末屋さ。今は花街から逃げてきたってぇ遊女を一人、預かっている」
はっとしたように、佐吉が顔を上げる。
「そ、そりゃ清か? 都の花街の、そうでかい廓じゃねぇけど・・・・・・そこの遊女じゃないか?」
「さぁねぇ。さっきも言ったが、その遊女はてめぇのことを忘れっちまってるんでね。心当たりがあんのかい? 何でだ? やっぱりお前さん、女衒の真似事でもしてたんかい」
顎をさすりながら言う千之助を、佐吉は束の間じっと見つめ、何から話したもんか、というように、視線を彷徨わせた。


