始末屋 妖幻堂

「・・・・・・こいつぁ・・・・・・」

 歩きながら、千之助は顔をしかめた。
 山の中とはいえ、先程までは、まだ草もそこそこで、歩きやすくはなかったが、歩けないことはなかった。
 が、小屋に近づけば近づくほど、四方から木々が生い茂り、行く手を阻む。

「まるで村から隔離するのが目的みてぇだな」

 進行を邪魔する木々や草に苛々しながら、千之助は小屋に近づいた。

「・・・・・・?」

 人の気配。
 本当に佐吉が冴の家の者を引き取っていたのなら、誰かしらいて当たり前なのだが。

 千之助は、音無く戸に近づいた。
 こちらも佐吉の家と変わらない掘っ立て小屋だ。
 戸の破れ目から中を覗く。

 暗闇の中に、目を凝らす。
 ただのヒトなら夜の闇で、さらに灯りのない小屋の中を覗いたところで、何も見えないだろう。

 だが千之助は違う。
 千之助の目が、小屋の中に一つの影を捉えた。

 しばらくその影を睨んでいた千之助は、そっと手を戸にかけた。
 こんな小屋に、鍵などない。
 ちょっと力を入れただけで、戸は動いた。

 だが何分造りもちゃんとしてないような、掘っ立て小屋だ。
 滑るように開くわけもなく、戸はすぐに、派手に軋んだ。
 静まり返った空気を、がたがた、ぎぎぎ、という音が揺るがす。