「俺っちなんぞに抱かれたら、後悔するぜ」

 冴の帯を解きながら言う千之助に、冴はふるふると首を振った。

「せ、千さんなら良いもの。あたしはほんとに、千さんが好きだよ」

「嬉しいねぇ」

 ぱさ、と解いた帯を落とし、千之助は冴の浴衣を広げた。
 日焼けしてない部分が、白く浮かび上がる。

 千之助は、冴の胸に顔を埋めた。
 太陽の匂いと共に、命の脈動が感じられる。

「・・・・・・羨ましいな、お冴さんは。『生きてる』のがわかる」

 冴は僅かに眉を顰めた。
 どういう意味だろう。

 疑問が湧いたが、己の胸を包んだ千之助の手の動きによって、疑問はあっという間に快楽の波に押し流された。

「ああっ千さんっ」

 仰け反った冴が、千之助の頭を抱え込もうとしたとき。

 行灯の火が、ばちっと激しく爆ぜた。
 千之助が、弾かれたように上体を起こす。

 振り返ると、行灯の火はまるで火薬玉を放り込んだように、四方に火の粉を撒き散らしながら、伸縮を繰り返している。
 辺りの影が、不気味に揺れる。