「つーことは、奴が娘らを売っ払ってたってことではないのかな」

「いや・・・・・・あたしが見た博徒が、女衒だったかもしれないよ? 都の女衒って、こういった村々を回って娘を調達するんだろ?」

「うん・・・・・・。そういう可能性もあるが。けど女衒ってのぁ、結構きちんとしてるんだぜ。都で高く売るためには、器量はもちろん、出自だってしっかりしてなきゃならねぇ。都の廓だって、案外いい加減な娘を買ったりしねぇよ。大籬だったりしたら、娘の店出し前に、生国まで主が出向くことだってあるからな」

「へぇ。じゃ、ますます佐吉なんか、出る幕ないね」

 千之助の浴衣の合わせに手を忍び込ませながら、冴が言う。
 とりあえず冴のしたいようにさせながら、千之助は考えた。

「・・・・・・佐吉の家族は? 兄貴がいるって言ってたな。兄貴は独り者だったんかい?」

「うん。佐吉の兄貴は、図体のわりに気の小さい、もやしみたいな人だったよ。奥手も奥手で、村のおばさん連中によくからかわれてるような人だよ」

「へぇ? 佐吉はタラシなのに、兄貴は奥手なのか」

「両極端さね。佐吉があんな節操なしだったから、余計そうなっちまったのかもしれないね。でもまぁ、大人しい良い人だったよ」

 兄貴の評判は悪くはないようだ。
 ということは、やはり佐吉の家族は、単に巻き添えを食って殺されたと考えるべきだろう。