「なぁお冴さん。前に俺は、村の娘を佐吉が売っ払ってるんじゃねぇかって言ったよな。・・・・・・どう思う?」

 千之助の部屋で、布団の上に座ったまま、彼は隣に座る冴に言った。

「う~ん、そうだねぇ。あのときは、佐吉ならやりかねないって思ったけど」

 考えつつ、冴は首を傾げる。

「でもさぁ、いくらあいつがそういう博徒と繋がりを持てたとしてもだよ、そんな博徒、大した奴じゃないよね? あたしにゃよくわかんないけど、佐吉なんて田舎のガキ大将程度の奴が付き合える博徒なんて、知れてるだろ?」

「そうだな・・・・・・。その辺は佐吉の腕次第だが」

 口の上手さだけで出世する奴もいるのだ。
 取り入る相手を見る目が鋭ければ、そしてその大物をたらし込めるだけの弁舌があれば、天と地ほどの身分の違いも飛び越えられる。

「佐吉はさぁ、確かに口は上手いけど、あくまで女子を口説くのが上手かったってだけだよ。男にゃ通用しないと思うな。見てくれの良さも手伝ってのことだもの」

「つまり、単なるタラシなだけってことか」

「そういうこと。千さんとは、わけが違うさ」

 言いながら、冴が身を寄せてくる。
 千之助は気づかぬふりで、質問を続けた。