始末屋 妖幻堂

「たま~に、山菜採りに行くときとかにさ、家の前の畑を耕してるのを、遠目に見ることがあるぐらいだよ。他の家に奉公に出ることもせず、自分たちの食い扶持だけを、細々と作って暮らしてる風だったね」

「お冴さんの家とも、特に交流はなかったってことか」

 こくん、と頷く冴に、千之助は己の顎を撫でた。
 あの死体は、ただ博徒に殺されただけではない。
 干涸らびていたということは、里の力が働いていたということだ。
 交流がなかったのなら、何故佐吉の家族の二人とも、里によって食われているのか。

---直接の死因は里じゃねぇが、刺される前に、相当食われてたはずだ。兄貴の死因もよくわからねぇし・・・・・・。里が全く佐吉の家族と交流がなかったのなら、普通に腐った死体が転がってるはずだぜ---

 二人が殺されてから、里が食ったということはあり得ない。
 羅刹は死肉は喰らわない。
 殺されてから、一気に干涸らびたのだ。

---生気がなくなったから、一気に崩れたんだ。ちょっと食われたぐらいじゃ、そこまで死体に変化はない。あそこまで干涸らびるには、生前相当食われてたはずだ。里が佐吉の親父と関係してたってこったな---

 里を調伏する前に、もうちょっと聞いておけば良かったと、密かに千之助は後悔した。

 そうこうしているうちに、佐吉の掘っ立て小屋の前に来る。
 冴は躊躇いなく、戸に拳を打ち付けた。