始末屋 妖幻堂

「佐吉はいないだろうね。前にも言ったけど、あいつ、勘当されてるような奴だからさ」

 前をすたすたと歩きながら、冴が言う。
 早足なのは、もう日が暮れつつあるからだ。
 今はまだ、真っ赤な夕日が山の稜線にかかっているが、あと少しで完全に沈んでしまうだろう。

「佐吉の家って、前に行った、村の端っこだよな。そういやあの辺、周りに家はなかったな」

 少し後ろをのんびりと歩きながら、千之助が言う。
 千之助にしたら、別に夜が更けたところで不都合はないのだ。

「まぁ・・・・・・佐吉の家は、尾鳴村でも相当貧しい家だから・・・・・・。何か、じぃさんの代が都で罪を犯して、逃げてきたらしいよ。そういう経緯があるから、村人との交流も、ほとんどなかった。外れの長屋とは、また違ったはみ出し者さね」

 だから、家の中に死体が転がっていても、誰も気づかないのだ。

---それに、腐る間もなく干涸らびているものな。あれじゃ中に入らねぇと気づくまい---

「奴の家族は? そんな存在感のない人たちだったのかい?」

「そうだね。ていうか、佐吉ぐらいだよ、積極的に村の者と関わりを持ってたのは」

 父親や兄貴には、ほとんど会ったこともないと言う。