始末屋 妖幻堂

「そういや、佐吉の奴も最近さっぱり見ない。まぁ元々家にも寄りつかないような奴だったけど」

「勘当されてるんだろ?」

 考えつつ、千之助は相槌を打つ。
 佐吉に関しては、どこまで突っ込んでいいものか。

 おそらく佐吉の家族が殺されているのも、まだ知らないのだろう。
 下手に口にすると、厄介事に巻き込まれそうだ。

「とにかく、その佐吉が建てたっていう家に行ってみるよ。あいつが真っ当なことしてるとも思えないけど、ちゃんとしてんだったら、それに越したことはないし。うちにいた人らの様子も心配だ」

 冴が腰を浮かす。

「・・・・・・お冴さん一人じゃ危険だ。俺っちも行こうかえ」

 冴に続いて腰を上げた千之助に、冴がちょっとはにかんだ。

「心配してくれんのかい」

「当たり前だろ。ただでさえ、ちょいと気になることだしな」

 冴には言ってもいいだろう。
 里のことも、薄々気づいていた娘だ。
 人より鋭い感覚の持ち主なのかもしれない。

 小菊のことを確かめるにも、最終的にはもっと詳しいことを聞き出さねばならない。
 仲の良かった冴なら、打って付けだ。

「お客人に、そのようなことをさせるわけには・・・・・・」

 冴と共に出て行こうとする千之助に、長が慌てたように声をかけた。
 が、千之助は、その長を軽く制する。

「何、お世話になったお礼ですよ。用心棒ぐらいなら、意外に俺っちでも務まります」

 軽く笑い、千之助は冴を促して家を出た。