始末屋 妖幻堂

「うん、これぐれぇで良いだろう。口入れ屋を通すと、伯狸楼に行けねぇかも知れんからよ、直で頼みに行きな」

 そして、ふとまじまじと呶々女を見る。

「・・・・・・あまり見目良くねぇほうが良いかなぁ」

 呶々女の顔に手を翳しつつ、千之助は考えた。

 小菊は相当良い顔をしていた。
 その顔が災いしてあのような火傷を負ったのなら、見目良い娘は危険かもしれない。

「だが、遣り手にとっても売れそうな娘は金蔓のはずなんだがな。そもそも遣り手に、娘をどうこうする権限はねぇだろう? 女将がいるんだし」

「その預かってる娘って、そんな良い顔なのかい?」

 ぷぅ、と呶々女が口を尖らす。
 その反応に、千之助は、おや、と片眉を上げた。

「女子ってのは、どんな状況でも見目良い奴には嫉妬するものか」

 遣り手もその口か? と考えるが、花街の遣り手であれば、女子は商品という認識のはずだ。
 そもそも売られてきたばかりの幼子に、嫉妬もクソもないだろうに。

「そんなことないよっ! 嫉妬なんてしてないよっ! 千さんがその娘っ子にのぼせても、牙呪丸さえ誑かされなければ良いものっ!」

 ぷんすかと怒る呶々女に、千之助は苦笑いを返す。