始末屋 妖幻堂

「千さんは無理だよ。花街で暴れるわけにはいかないだろ。でもさ、牙呪丸だけ行かすのも・・・・・・心配だよ」

「そうさなぁ~。下手すりゃ牙呪丸が登楼するたびに、人死にが出るしな」

 娘がやたらと牙呪丸にくっついていたがるのは、どうやら甘やかな感情などではないらしい。
 相当物騒なことを言い、千之助も頷いた。

「じゃあ・・・・・・気は進まねぇが、頼めるかい、呶々女(どどめ)」

「うん。じゃその間、牙呪丸のこと、頼んだよ」

 呶々女と呼ばれた娘は、大きく頷くと、横に座る牙呪丸の頭を優しく撫でた。
 見たところ、呶々女は牙呪丸よりも随分小さい。

 が、二人の態度を見る限り、呶々女のほうが立場が上のようだ。

「千の旦那。廓などに呶々女を入れて良いのかの? 勿体ない」

 口調は否定的だが、顔は相変わらず無表情で、牙呪丸がやっと口を開いた。

「何、見世に入って即客を取らすようなことはしねぇだろう。だがそうだな、念のため、もうちぃっと幼く見えるようにしとくか」

 そう言って千之助は、呶々女の頭を両手で掴んだ。
 そのまま軽く顔から頭を撫でると、呶々女は先よりも随分幼い、幼女になった。
 次いで、ぽんぽんと頭を叩くと、背丈も少し小さくなる。