熱っぽい瞳で見上げてくる冴は、そう言うや、ぐいっと力任せに千之助に寄りかかった。
 あまりの力に、千之助は身体の均衡を失った。
 冴と共に、地面に転がる。

「千さん、好きだよ」

 馬乗りになった冴が、言いながら千之助の口を己の口で塞ぐ。
 すぐに舌が絡みついてきた。
 手は早くも千之助の裾を割りにかかっている。

「・・・・・・おいおいお冴さん。何も白昼こんなところで交わることもあるまい」

 口を離し、千之助は身を捩って冴の手から逃れながら言った。
 が、冴の手は止まらない。

「良いんだよ。千さんなら恥ずかしくないもの。・・・・・・抱いておくれよ」

 一旦千之助の着物から手を引き抜くと、冴は己の着物をはだけようと、襟に手をかけた。
 その様子に、千之助はひっそりとため息をつく。

「落ち着きなっせ。都男ってだけで、そんな簡単についていくとか言っちゃ危険だぜ。俺っちが人買いだったらどうすんだ」

「そんなの、千さんがそんな人じゃないことぐらいわかるよ。それに、あたしは都男だったら誰でも良いわけじゃない。千さんに惚れたんだよ」

 はだけた胸に、千之助の手を導きながら言う。
 手が冴の乳房に触れた瞬間、千之助は少し笑った。

 見た感じより小ぶりだが、張りがあり健康的だ。
 里のような妖艶さはないが、だからこそ、千之助は思わず安心したのだ。