始末屋 妖幻堂

「獣相手・・・・・・!」

 さすがにこれには娘も絶句する。

「人に化けた狐や狸が相手なのとは訳が違う。ただの余興だからな。大方、豚や犬か・・・・・・」

 忌々しそうに、千之助は手の中で煙管を弄んだ。
 少し真剣に考え込んでいた娘が、ちら、と牙呪丸を見た後、千之助に目を向けた。

「・・・・・・あたしが行こうか?」

 立候補したわりにはそわそわと言う娘に、千之助も少し考える。

「おめぇを送り込んだら、それこそ‘裏’に行かされるかもしれねぇぜ?」

「でも、遣り手とかを調べるんだったら、内部に詳しくなったほうがいいだろ? それに、牙呪丸とあたしは、一体なんだから」

 顎を撫でつつ、千之助は考える。
 確かに実際そこで働いてしまったほうが、いろいろ調べられる。
 客として行くよりも、より内部のことがわかるだろう。

「確かにな・・・・・・。俺っちが幇間として潜り込むことも考えたんだが・・・・・・」

 生憎花街では、千之助は有名だ。
 最終段階でバレるのは構わないが、初めからでは、まず雇ってももらえないだろう。