始末屋 妖幻堂

「昔っからの住民は、奴の口車にゃ乗らねぇってことぁ、佐吉ってのもこの村の人間なわけか。どこにいる?」

「いるかなぁ。あいつ、親に勘当されてるような奴だからさ」

 ひょいと冴が、村のほうを見る。

「あっちのほうに、傾いた家があるだろ。ほら、村の端っこのほう。あそこの次男坊さ」

 冴の指差す方向を見れば、なるほど、今にも崩れ落ちそうな掘っ立て小屋が、僅かに見える。

 千之助は眉を顰めた。
 いくら顔が良く口が上手くても、あんな家の次男坊が、それほど良い人間に見えるだろうか。

 冴の口ぶりからは、佐吉の噂は有名のようだ。
 財もなく、評判の悪い男など、いくら見てくれが良くても敬遠されるのではないか。

「女子ってのぁ顔さえ良ければ、それがどんな悪たれでも参っちまうもんかい?」

 千之助の疑問に、冴は何を勘違いしたのか、そっと彼の手を握ってきた。

「そんなことないよ。あたしは佐吉なんざ、ちっとも良いと思わない。千さんのほうが、よっぽどだよ」

「うん、俺っちのほうが、よっぽどの悪たれだな」

 何気に話の腰を折る千之助にもめげず、冴はずいっと顔を寄せる。