「お父の手前、いつまでもいがみ合ってるわけにもいかないだろ。でもあたし、元々あの女は嫌だったんだ。あいつのせいで、昔からの女中がどんどんいなくなるしさ。裏山から来たっても、ずっとそこで暮らしてたわけでもあるまいに、以前のことは全然わからないし」
「ほぅ」
千之助は、僅かに眼を細めた。
「だからさ、あたしが千さんと懇ろになっても、お父には口を出す権利なんてないんだよ」
---懇ろねぇ・・・・・・---
失笑する千之助にも気づかず、冴は彼の腕に己の腕を絡めた。
「ところで、どこに行くんだい? この先なんて、岩ばっかで何もないよ?」
村から大分外れてから、冴が辺りを見回して言った。
千之助も前方にそびえる岩山を眺め、次いで周りを見渡す。
「確かにな。この辺りの山は、やたら岩がごろごろしてるな。村のほうは土も良いのに、山に入ると途端に険しくなる」
「こっちはね。反対のほうは、いろいろな木も山菜もあるんだけど。ほら、千さんと初めて会ったのも、向こうの湖だったろ」
恋人との思い出を語るように、冴が言う。
なるほど、冴の言うとおり、村を挟んで山の種類が全然違う。
「ほぅ」
千之助は、僅かに眼を細めた。
「だからさ、あたしが千さんと懇ろになっても、お父には口を出す権利なんてないんだよ」
---懇ろねぇ・・・・・・---
失笑する千之助にも気づかず、冴は彼の腕に己の腕を絡めた。
「ところで、どこに行くんだい? この先なんて、岩ばっかで何もないよ?」
村から大分外れてから、冴が辺りを見回して言った。
千之助も前方にそびえる岩山を眺め、次いで周りを見渡す。
「確かにな。この辺りの山は、やたら岩がごろごろしてるな。村のほうは土も良いのに、山に入ると途端に険しくなる」
「こっちはね。反対のほうは、いろいろな木も山菜もあるんだけど。ほら、千さんと初めて会ったのも、向こうの湖だったろ」
恋人との思い出を語るように、冴が言う。
なるほど、冴の言うとおり、村を挟んで山の種類が全然違う。


