「ところでお冴さん。あんたぁ、家の人にゃ言ってきたのかい?」
勝手に娘を連れ歩いていると思われても厄介だ。
一応聞いてみるが、冴はつん、とそっぽを向いた。
「家の人って? 婆のこと?」
「婆って、あの女中か。ふ~ん、あの人は、昔っから仕えてるのかい」
確かに冴と里よりも随分年上だったが、婆というほど年寄りだったかな、などと思いつつ、千之助は冴の後について歩く。
「旦那さんやご内儀がいるだろ。あのご内儀も、若ぇわりにゃ家のこともよくやってるって話じゃねぇか。お冴さんとも、仲良いんだろ?」
途端に冴が、キッと振り向いた。
「千さんまで、あの女にやられちまったのっ?」
きょとんとしている千之助に向き直り、冴は彼に近づいた。
そして、訴えるような目で千之助を見上げる。
「お父は、あの女にすっかりのぼせちまってる。どうかしてるよ。あんな若い女が、お父みたいな老人に、本気で惚れるわけないだろ」
「おやおや。お冴さんは、ご内儀が嫌いなのか? 初めは打ち解けなかったが、最近は仲良くやってるって、旦那さんは言ってたぜ」
勝手に娘を連れ歩いていると思われても厄介だ。
一応聞いてみるが、冴はつん、とそっぽを向いた。
「家の人って? 婆のこと?」
「婆って、あの女中か。ふ~ん、あの人は、昔っから仕えてるのかい」
確かに冴と里よりも随分年上だったが、婆というほど年寄りだったかな、などと思いつつ、千之助は冴の後について歩く。
「旦那さんやご内儀がいるだろ。あのご内儀も、若ぇわりにゃ家のこともよくやってるって話じゃねぇか。お冴さんとも、仲良いんだろ?」
途端に冴が、キッと振り向いた。
「千さんまで、あの女にやられちまったのっ?」
きょとんとしている千之助に向き直り、冴は彼に近づいた。
そして、訴えるような目で千之助を見上げる。
「お父は、あの女にすっかりのぼせちまってる。どうかしてるよ。あんな若い女が、お父みたいな老人に、本気で惚れるわけないだろ」
「おやおや。お冴さんは、ご内儀が嫌いなのか? 初めは打ち解けなかったが、最近は仲良くやってるって、旦那さんは言ってたぜ」


