始末屋 妖幻堂

「でもそれも、あたしが帰れば済む話ですよね」

 幾分落ち着いてきた小菊が、やはり項垂れながら言う。

「どうかな。伯狸楼は、ヤバい廓だよ。攫っておいて、あんたが帰ったからって素直に小太を解放するとも思えない。あんたが帰りゃ、用済みかもね」

 弾かれたように、小菊が顔を上げた。
 目を見開いて、固まっている。

「しかも小太の店は、ちょいとした術中に落ちてるみたいだ。死体は、見つからないようにされるだろう。見つかったとしても、それが小太だとわからないぐらいの、惨さだろうね・・・・・・」

 狐姫が、言いながら眉を顰める。
 そういえば伯狸楼には、おさん狐だけではない。
 記憶を操作することのできる、術者もいるようだ。
 そちらもどうにかしなければならない。

「厄介な事に、変に弱いんだよ。術がもっと強力なら、攫われてる間の小太の記憶を消すなり何なりすれば、生かして帰すことだってできるだろうに」

「弱っちいお陰で、いつ破れるかわからんから、完全に口を封じるしかないということか」

 やっと牙呪丸が、まともな相槌を打つ。

 小菊は黙っている。
 記憶どうこうということは、小菊本人にはわからない。
 術にかかっている当人だからだ。