「・・・・・・大体のことはわかったがねぇ。小太と呶々女を連れ戻したところで振り出しだ。あんたの最終的な望みは、何なんだい?」

 疲れたように、脇息にもたれかかりながら、狐姫が座敷の隅に座った小菊に問う。
 が、小菊が口を開く前に、牙呪丸がずいっと身を乗り出した。

「何だと? 我が旦那に頼まれたのは、小倅の行方ぞ。それはもうわかったのであろ? だったら任務終了ぞ」

 狐姫が冷たい目を向ける。

「小倅を取り戻すついでに、呶々女も連れ帰れば、それで終わりであろうが」

「あんたはね。だがそれじゃ、振り出しだって言ってるだろ。何の解決にもならないんだよ」

 うるさそうに言い、狐姫は再び小菊に目を向ける。

「それで? あんたはどうなりたいんだ? 裏店に行かされなければ、それで良いのか? 完全に足抜けしたいのかい?」

 小菊は、はっとしたように顔を上げ、だがすぐに視線を彷徨わせた。

「そ、そりゃ・・・・・・。足抜けできるに越したことはないですけど。でもそんなこと、許されないでしょうし・・・・・・」

 もごもごと言う小菊に、狐姫の眉間に僅かに皺が寄る。

「だったらとっとと廓に帰らぬか。お主がいつまでもここにおるから、呶々女が帰って来られぬのじゃ」

 牙呪丸が、またも空気を読まずに口を挟んだ。