始末屋 妖幻堂

「おや牙呪丸。自ら始末を買って出るとは、珍しいじゃないか」

「この者らを始末せねば、我は伯狸楼に行けぬようじゃ。我が迎えに行かねば、呶々女も帰って来られぬようだし、だったらとっとと邪魔者を始末したほうが良かろう」

「・・・・・・とどのつまりは、呶々女会いたさってことか。ったく、相も変わらず親離れできないんだから」

 どこまでも行動の中心は呶々女の牙呪丸に呆れながらも、狐姫は、つい、と男に手を向けた。
 にやりと、口角を上げる。

「良いよ。やっておしまい」

「うるせぇ! やっちまえ!!」

 己を奮い立たせるように、男も叫び声を上げて襲いかかる。
 さすがに荒事に慣れた者たちだ。
 殺すことに躊躇いがなくなれば、動きも変わる。

 しかし、それは狐姫や牙呪丸にも言えること。
 後のことを考えなくて良いとなれば、正体を曝したところで困らない。

 四方から襲いかかる男を、牙呪丸は蛇体になった下半身を一閃して、容赦なく薙ぎ倒した。
 ヒトの身体ほどもある太さの大蛇だ。
 それが鞭のようにしなり、一切の手加減なしに叩き付けられるのだ。
 ヒトなど、ひとたまりもない。

 もろに喰らった初めの一人は血を吐きながら土間の端まで吹っ飛び、その他の二、三人も、床や棚に思いきり叩き付けられる。
 傍にいた男にぶつかり、共倒れになる者もいる。

 一瞬で、辺りは血の海になった。