始末屋 妖幻堂

「く、くそっ・・・・・・。お、お前ら、一体何モンだ。小菊と一体、何の関係があって・・・・・・」

 力業に出るのは自殺行為だと思ってか、男らは遠巻きになりながら、話し合いに切り替えようと試みる。
 もっとも腰は、思いっきり引けているが。

 そんな男どもに、杉成がずいっと近づいた。
 びくっと大きく肩を震わせ、前にいた男が後ろにさがる。

 小さな杉成に、ごつい男が怯える様は、実に滑稽である。
 狐姫は、袖を口に当てて高笑いした。

「何とまぁ、情けない者どもよ。そんなに杉成が怖いか」

 勝ち誇ったように笑う狐姫に、男はあからさまに顔色を変えた。
 が、杉成が手を動かしたのを目の端に捉えると、飛び出しそうになった暴言は、たちまち呑み込まれてしまう。

「杉成、おやめ」

 なおも面白そうに笑みを浮かべながら、狐姫は矢を放とうとしていた杉成を制した。
 杉成が動きを止めると同時に、狐姫の傍にいた娘も構えていた扇を下ろす。

「・・・・・・なぁ、あんたは小菊の何なんだい? あいつは里から、ちゃんとした取引を経て伯狸楼に買われたんだぜ? まだ見世出しもしてねぇから、借金まみれの娘だぜ? そんな格好してるなら、あんただってそれがどういうことか、わかるだろう?」

 相手を刺激しないよう注意しつつ、男は狐姫に声をかけた。
 ここまで狐姫は、これといった攻撃はしていないのだが、雰囲気から、狐姫がこの場では頭だと判断してのことだ。

 単に全く喋らない不気味な子供二人や、全く会話の通じない色男などよりは、狐姫が一番まともに見えただけかもしれないが。