始末屋 妖幻堂

「ぎゃあぁっ!」

 顔を削がれた男は、叫び声を上げて己の顔面を押さえた。
 投扇のように優雅に飛んだ扇は、男の前で凶器と化し、鼻を削いだのだ。

 削がれた男のほうは傷口が見えないため、余計に恐怖に駆られている。
 足元に落ちた鼻を見て、息を呑んだ。

 男どもが呆気に取られている間に、杉成が矢を放つ。
 完全に攻撃態勢を取ると、この店に集うモノたちは容赦がない。

 まして、今回は主である千之助の許可が下りているのだ。
 杉成も、容赦なく目や首を狙う。

「うおおおお!」

「ひいぃぃっ!」

 強気だった男らから、悲鳴が上がる。

「何じゃ、こ奴らはもう、用無しか?」

 牙呪丸がゆっくりと立ち上がりながら、狐姫を振り返った。

「そうさね。小太のこともわかったことだし、もういらないわえ」

 座敷の奥で腕組みした狐姫が、にやりと笑う。
 その表情に、男どもは背筋が凍る気がした。
 一番店の入り口近くにいた男が、逃げようと戸に手をかける。

「おや、逃げるか。でもお主らも、我らをこのままにしておいて良いのか? お互い、まずいのではないのか?」

 牙呪丸が、珍しく面白そうに言った。
 そして、するすると滑るように、入り口に近づく。